2011-07-15

【日経一面企業分析】トヨタ自動車[7203]

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◆ トヨタ、車体2社を完全子会社に 円高受け生産再編(2011/07/14)
トヨタ自動車は13日、東証1部に上場する子会社の車体メーカー、トヨタ車体と関東自動車工業を2012年1月に株式交換で完全子会社化すると発表した。
◆ 記事への素朴な疑問

トヨタが上場子会社であるトヨタ車体関東自動車工業を100%子会社化し事業再編を進めますよ、というニュース。事業再編の主な目的は、(1)生産の受託・委託に止まっていた関係を深めグループ一体として経営効率を高めること、(2)少数株主を排除し、スピーディーな経営体制を築くこと、といったところでしょうか。

さて、記事の見出しにもあるように国内の輸出各社に円というコストが重くのしかかっています。この為替の状況について
豊田章男社長は「現状では、日本でのものづくりは理屈上成り立たない水準」といいつつも、「環境が不利だからと言って国内生産を簡単にあきらめるわけにはいかない。」としています。事業効率性と企業の社会的責任との間で苦悩する経営者の姿がまざまざと映しだされています。

さて、トヨタの国内生産比率はどうなっているのでしょうか?
また、競合他社の水準はどうなっているのでしょうか?

以下、トヨタ・日産・ホンダを比較しつつ分析します。ただ、トヨタに関しては6月21日付のエントリー 、『自動車大手、期間従業員の採用再開』でも扱ったので、重複する部分に関しては省略します。

◆ 損益計算書の視点
トヨタ[7203]日産[7201]ホンダ[7267]のPL(2003-2011)
売上の規模でみるとトヨタが18.9兆と日産・ホンダの合計を上回っています。しかし、収益性では様相が一変します。自動車セグメントだけの営業利益率はトヨタ0.5%、日産5.1%、ホンダ3.9%。トヨタの収益性の低さが際立っています。トヨタは販売金融セグメントからの営業利益が自動車セグメントを上回っています。トヨタはすでにモノづくりだけの会社ではなくなっている、ということです。

◆ バリューチェーンの視点

さて、トヨタの国内生産比率はどうなっているのでしょうか?言い換えると
トヨタはどこで作って、そしてどこで売っているのでしょうか?トヨタの行動を測るために、国内・海外それぞれ実際の生産台数で比較してみようと思います。
トヨタの地域別生産台数の推移[2001-2010*]
*年度は暦年(1月から12月)、出所:トヨタHP
海外での生産が大きく伸びており、2007年度を境に国内の生産台数を上回っています。結果として、国内生産比率(国内÷世界)は低下傾向にあり、2010年の時点では43.1%となっています。

さて、直近の国内の生産台数328万台はどこへ売られているのでしょうか?国内で作られた車は国内で売られるか、輸出されることになります。若干のタイムラグがあるため厳密ではありませんが、国内生産 = 輸出台数 +国内消費分 としてその台数の推移を追ってみました。それが次の図です。
トヨタの国内生産車の行方[2001-2010*]
*年度は暦年(1月から12月)、出所:トヨタHP
2001年の段階では国内向けが輸出分を上回っていたものの、それ以降は一貫して輸出台数が上回っています。国内での生産台数の伸びは輸出に支えられていたということが出来ます。特に円安が進行した2006年から2008年には国内生産台数の60%以上が海外へ流れて行ったことになります。今となっては円安を受けて輸出企業が好業績などと遠い昔のように感じてしまいますね・・・。単純に経済合理性を考えれば、車も「地産地消」することで為替リスクから逃れることが出来ます。2010年度の輸出台数は175万台になります。トヨタは円という重い通貨にどれだけ耐えられるのでしょうか?

さてここまで、「製造」の視点でトヨタを追ってきました。最後に「販売」の視点からおさらいしてみましょう。次の図は海外・国内での販売台数の推移です。



トヨタの販売台数の推移[2001-2010*]
*年度は暦年(1月から12月)、出所:トヨタHP
増加基調の海外販売に比べ、国内市場は停滞しています。2001年から2010年までの増減は海外+68.1%、国内▲8.7%。改めて気づいたのですが、円安の恩恵を受けて、景気が良かった「はず」の2006年・2007年にも国内の販売台数は伸びていなかったのですね。

◆ 同業他社はどうなっているの?「横」比較の視点

トヨタの国内生産比率は低下傾向にあり、2010年の時点では43.1
%となっていました。さて、競合他社の水準はどうなっているのでしょうか?各社の国内生産比率の推移を見てみましょう。
トヨタ・日産・ホンダ国内生産比率の推移[2002-2010*]
*年はトヨタが暦年(1月から12月)、日産・ホンダは年度は会計年度(4月から3月)
(出所:トヨタHP日産HPホンダHP
確かにトヨタの国内生産比率43.1%は日産の25.4%、ホンダの25.5%に比べて高水準となっています。円高が一番痛いのはトヨタということが出来ます。ただ、各社とも国内生産比率が低下傾向にあるというのは共通しています。

次に、国内生産台数のうち、どれだけが輸出に回っているか、という輸出率で比較してみましょう。
トヨタ・日産・ホンダ輸出率の推移[2002-2010*]
*年はトヨタが暦年(1月から12月)、日産・ホンダは年度は会計年度(4月から3月)
(出所:トヨタHP日産HPホンダHP
ホンダの輸出率が最も低く推移しています。「地産地消」の度合いが最も高く、為替変動への耐性が強いといえるのではないでしょうか。ショック後の利益水準が最も高かったのもホンダでした。

◆ 重たい円

「トヨタの現在の為替抵抗力は、米ドルに対して85円がいいところ。このため、今も1ドル80円でも戦える状態に持っていくため、技術革新や素材の見直しなどの検討・研究を進めている。」とは今回の会見での
新美副社長のコメントです。トヨタが6月10日に発表した決算予想での想定為替レートは、ドル82円、ユーロ115円。これに対し、足元の為替水準は想定を上回る水準で推移しています。また、各国の中央銀行の動きに対し日本は、というと・・・。トヨタが経営努力を進め「1ドル80円でも戦える状態」にしたとしても戦えないという可能性もあります。経済性と社会的責任・・・経営陣の苦悩は続きそうです。

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