2011-08-19

【日経企業分析】東京電力[9501]

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◆ 東電保有のKDDI株、早期売却で一致 調査委  会社側資産処分案、「数字ありき」と批判(2011/8/18)
東京電力の経費削減や財務内容を調査する経営・財務調査委員会(委員長・下河辺和彦弁護士)は18日、第4回会合を開いた。東電の資産売却について、東電が提示した保有資産の売却案を前提とせずに売却対象を洗い出すことで一致した。一方KDDI株の売却については、早期売却に向け手続きを進めるよう求めることでまとまった。
◆ 記事への素朴な疑問


リストラ案の一環として資産の切り売りを進めようとしている東電。7月28日に行われた第三回の会合では、「1.保有資産の洗い出し 2.売却資産の特定、3.高コスト構造の改善、4.料金制度の改善案、5.東電の長期的なあり方」の5分野を主要な論点として検討していくことで合意をしています。今回の会合では1.保有資産の洗い出しそして2.売却資産の特定について議論がおこなわれたようです。ただ、議論の結果について、調査委員会の面々はどうも納得していない様子です。


さて、東電の提案は妥当なものなのでしょうか?
そして、経営・財務調査委員会は何を怒っているのでしょうか?

以下、東電の財務について分析します。また、2011年3月期の決算に関しては「東電の戦いはこれからだ」でも扱っていますので、こちらも合わせてご覧ください。

◆ バランスシートの視点
東電[9501]のBS(2011)
まず議論のスタートとして、2011年3月末時点での東電のBSを押さえておくことにしましょう。左上の現預金が2.2兆円、左下の投資その他の資産が2.1兆円と一見すると、財産的な価値を持つ資産がたくさんありそうです。しかし、投資その他の資産は使用済燃料再処理等積立金(9,800億円)もふくまれており、この分はおいそれと取り崩せません。左下の投資等のうち、財産的にしっかりしているのは、長期投資(4,900億円)くらいと見ておいたほうが良いかも知れません。

◆ 東電の提案は?

それでは、東電の提案が妥当なものかどうか検証するために今回、東電が売却しようとしている資産のリストを見てみましょう。東電は第2回委員会で下記のような方針を明らかにしています。


不動産については、電気事業に直接用いていないものを中心に 1,000 億円程度売却予定。有価 証券・国内外各事業については、有価証券は上場株式等を中心に、また各事業は電気事業への影 響や将来性を踏まえつつ合計 5,000 億円以上を売却予定。

今回の会合では、さらにもう少し細かく進み、不動産 1000億円、有価証券 2700億円、関係会社株式 2300億円という数字を出しています。(出所:東電、KDDI株は早期の売却意向=経営・財務調査委)引き続き、これらの数字が東電にとってどのような意味合いを持つか見ていくことにします。

まずは、有価証券2700億円という数字の妥当性を見ていくことにしましょう。

有価証券、マーケットの評価はどうなっている?


財産目的で保有する有価証券の保有状況は、有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】⑤株式の保有状況に記載されます。

東電が所有する有価証券の内、主な銘柄は下記の通り(一緒に保有目的も書いておきました。全社「当社事業の円滑な遂行」とありテンプレ感が満載です。ただ、「当社事業の円滑な遂行」のためにTBS株、テレ朝株を保有しているというのは何だかシュールな感じがします)、では詳しく見ていくことにしましょう。
2011年3末時点の東電の保有する投資株式リスト及び現在の評価額(保有目的が純投資目的以外であるもの)(*株式数は2011年3月末時点、**株価は2011年8月19日時点、***投資株式の総額は2011年3月末時点のもの)
これによると、東電は2011年3月末時点でいわゆる持ち合い株式というやつを245銘柄保有しており、当時の時価総額は3,256億円にのぼるということです。保有株数が開示されている上位29銘柄の現時点の時価総額は2,439億円となっています。そして、このうち記事の冒頭にもあったKDDI株が1,930億円と抜きん出た数値になっています。

東電側が処分するという有価証券の総額は2,700億円ですから、KDDI株をはじめとして、保有している投資株式の8割超を売却するということになります。この8割超という数字をどう評価するかが問題ですが、個人的にはかなり踏み込んだ数字という気がします。ただ、上記はあくまで現時点での評価額だということを忘れてはいけません。「東電の売り」という圧力がかかるわけですから、上記どうりの金額で回収できるかどうかはあやしいところです。

なお、東電は債券などはほとんど保有していないため、今回のエントリーでは省略します。さて、次に、関係会社株式2,300億円という数字の妥当性を見ていくことにしましょう。

◆ 関係会社株式のお値段は?

東電は関連会社の売却で2,300億円くらい調達したいとしています。しかし、関連会社は一部は上場しているものの、ほとんどは非上場です。いくらの値段がつくのか極めて不透明と言わざるを得ません。東電はどんな関連会社を抱えているのでしょうか?

2011年3末時点の東電の保有する関係会社株式のうち、上場している銘柄リスト及び現在の評価額
(*株価は2011年8月19日時点)
東電は2011年3月末時点で168の子会社、70の持分法適用会社を抱える企業集団です。上記は、そのうち上場している4社のデータになります。4社合計した評価額は560億円あまり。

2,300億円を調達するには上記4社の持分すべてを売却したとしても残り1,740億円分を市場の外の誰かに買ってもらう必要があります。東電は誰に、何を、いくらで売却して1,740億円を調達するのか、そのロジックを提示するのが本来のあるべき姿です。しかし、調査委員会にはそのロジックが説明されなかったようです。「数字ありき」とコメントしていたのはこのためです。調査委員会の憤りもごもっともといった感じです。



最後に不動産1,000億の妥当性を見ていくことにしましょう。


◆ 丸まりすぎです、1,000億円


企業が持つ不動産というのは、企業の外部からはなかなか評価しづらいのが正直なところです。とはいえ、土地は原則取得原価で評価されますから、歴史のある企業ほど土地の含み益を抱えている場合が多い、というのが一般的です。関係会社株式と同様に、どの不動産を、いくらで売却するのか、そのロジックが不透明であったようです(個人的には、不動産に関しては、東電は歴史ある企業ですし、もっと抱えているのではないか・・・と勘ぐっていますが)。ともかく、1,000億円は数字が丸まりすぎています。

◆ 「素朴な疑問」への回答は?

結局のところ、問題は前回の会合からあまり踏み込んでいない数字を出してきた東電にありました。「問題は金額ではなく、数字の背後にあるロジックである。真面目に数字を出せ」という経営・財務調査委員会のごもっともなツッコミが入ったということでしょう。事業用資産は売却価額が高いからといって簡単に売ってしまって良いものではありません。既存の事業にどんな影響があるのか、それが重要です。議論の前提となるデータが必要であり、東電、もっとしっかりしなさい!といったところでしょう。


参考:東京電力に関する経営・財務調査委員会



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