2011-09-09

【日経一面企業分析】ワタミ[7522]

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◆ 外食、被災地で雇用創出ワタミ、陸前高田にコールセンター 「築地銀だこ」、石巻に本社移し工場も新設(2011/9/6)

外食企業が東日本大震災の被災地で雇用を拡充する。ワタミは2012年2月をめどに宅配弁当の注文を受け付けるコールセンターを岩手県陸前高田市に設ける。地元高校の卒業生や職を失った人など約100人を雇う。たこ焼きチェーン「築地銀だこ」を運営するホットランド(群馬県桐生市)は11月に本社を宮城県石巻市に移し、タコの加工工場も新設する。

◆ 記事への素朴な疑問

「金は天下の回り物」。3.11から早くも半年が経ちましたが、被災地の復興には経済的な自立がかかせません。企業により雇用がもたらされ、消費につながる。一時的な支援も確かに重要ですが、継続的にキャッシュが回る仕組みの構築こそ欠かせないことでしょう。今回のワタミ・築地銀だこの事例は仕組み構築の起点となるものといえそうです。

とはいえ、被災地産の農産物に対する懸念も一方にあります。ワタミのような外食産業であれば特にでしょう。この点、ワタミが被災地で展開するのは宅配食品事業のコールセンター。相対的に割安なコスト(人件費・地代)で事業展開できるとも言え、Win-Winのしたたかな投資といえるのではないでしょうか。

さて、そのワタミ自身のキャッシュの流れはどうなっているのでしょうか?

以下、ワタミの財務について分析していきます。

◆ 業績のトレンドは?損益計算書の視点

まずはワタミの全社の業績の推移を見ていくことにしましょう。
ワタミのPL(2002-2011)
まずは全体的なトレンドから見ていくことにしましょう。すると、売上が右肩上がりに上昇しているのに比べ、利益面は2000年代前半に停滞気味であることがわかります。

しかし、ここ5年ほどは、売上の伸びを利益の伸びが上回っており、収益性は改善の方向に向かっています。直近の2011年3月期の売上は1230億ほど、これに対して営業利益は72億、営業利益率は5.8%ほどとなっています。

以下、外食・介護それぞれの事業セグメントを見ていくことにしましょう。

◆ ワタミはどこで儲けているのか?セグメントの視点


ワタミのセグメント別PL(2005-2011)
棒グラフが売上高、そして線グラフが営業利益率を表しています。居酒屋チェーン「和民」を中心にした外食事業は、利益率こそ横ばいのものの売上はダウントレンドとになっています。

これに対して、大きく伸長しているのが介護事業です。2006年からの平均売上成長率は37%にものぼっており、営業利益率も17.4%にも達しています。

さて、売上の「額」、営業利益「率」はわかりました。では、利益の「額」はどうなっているのでしょうか?
ワタミのセグメント別営業利益(2005-2011)
利益の額からわかるのは、横ばいの外食、そして急伸の介護という関係です。ワタミの近年の利益率の向上は、利益率に優れた介護の伸びにあった、ということができます。

・・・と、「利益」の観点からはここで終了です。

しかし、今回のエントリーのテーマは「キャッシュの流れはどうなっているのか?」ということでした。

投資家として大事なのは、「利益」よりも「キャッシュ」です。以降、複数の事業セグメントをもつ企業のキャッシュの流れについて見ていくことにしましょう。

PLと同様にまずは全社的なキャッシュフローを見ていくことにしましょう。

◆ 投資と回収のバランスは?キャッシュフローの視点

ワタミのCF(2002-2011)

キャッシュフローマトリクスの右下に位置しており、「普通の会社」ということができます。よく見ると大まかに2つのゾーンに分けることができそうです。まず、投資CFが営業CFを上回り、フリーキャッシュフローがマイナスの「投資期」だった2006年まで。次に、投資CFを上回る営業CFを生み出しており、フリーキャッシュフローがプラスの2007年以降です。さて、このキャッシュフローにそれぞれの事業セグメントはどう影響しているのでしょうか?

◆ 外食で稼いで、介護に投資。ワタミのおカネの流れが明らかに!

ワタミの事業別のCFマトリクス(2002-2011)

上記は、先ほどのキャッシュフローマトリクスを事業セグメントごとにしたものです。全社的なキャッシュフローマトリクスと構造は変わりません。すなわち、右に行けば行くほど稼ぎが多く、下に行けば行くほど多くの投資をしているというものです。投資より、稼ぎが大きく、フリーキャッシュフローを生み出していれば水色のゾーンということです。

注意点としては、【セグメント情報】から抽出した値を使った擬似的なものであるということができます。このため正確性というよりはむしろ、「事業セグメント間の大まかな関係をつかむためのもの」としてみていただければと思います。

内容に移る前に、それぞれの軸の算出方法について解説します(この段落は飛ばしていただいても結構です)。横軸の「みなし営業CF」は、各年度セグメントごとの税引き後営業利益に減価償却費を足し戻したものです。そして、縦軸の「みなし投資CF」は「資本的支出」または「有形固定資産の増加額」を投資とみなし、それぞれプロットしています。

さて、それぞれの事業セグメントはどうなっているでしょうか?


まずは外食です。こちらは、営業CFも投資CFも同じような水準でフリーキャッシュフローを生み出し続けている事業だということができます。利益の面では下降傾向だった外食でしたが、キャッシュフローで見ると悪くないということができそうです。


これに対して、利益の面では急伸していた介護はどうでしょうか?こちらは、営業CFは確かに伸びているものの、それ以上に投資水準が拡大しています。投資フェーズにあるといえるでしょう。

以上より、外食・介護2つの事業間の関係がわかりました。キャッシュの「供給源である外食、投入先である介護」という関係です。プロダクト・ポートフォリオマネジメントでいうと外食は「キャッシュカウ」的な位置づけ、介護は「花形」的な位置づけということができそうです。

もちろん、キャッシュの供給源は自らの事業だけではありません。企業の外部、すなわち資本市場から借金や株式発行して調達するという方法もあります。そして、その調達はBSに現れることになります。



◆ 「素朴な疑問」への回答は?

ワタミは有価証券報告書の【対処すべき課題】で「②継続的な事業ポートフォリオ最適化の取り組み」を掲げています。そこで「介護・高齢者向け宅配の「高齢者向け事業」へ経営資源を優先配分」するとしています。


事業別のキャッシュフローマトリクスでも見たように、ワタミは言行一致していることがわかります。また、今回のコールセンター事業も高齢者向け宅配食品事業の一環です。企業は投資回収を繰り返す運動体です。メリハリの効いたキャッシュの配分が新しい飯の種を作ることになるのですね。

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