2011-09-16

損益ジェットコースター!?エルピーダの躁鬱

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◆ エルピーダ、国内生産の4割を台湾へ(2011/9/15)
パソコンなどに使われる半導体のDRAM大手、エルピーダメモリは日本から台湾に生産能力の4割を移転する。国内唯一の拠点である広島工場(広島県東広島市)の製造設備を台湾子会社に移し、日台の生産能力が逆転する。台湾で汎用品を量産し、広島工場はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)向けなど先端技術を使う製品に特化する。長引く円高を背景に、製造業の生産体制再編が加速してきた。
◆ 記事への素朴な疑問

新政権になっても毎度、円高が続いています。そんな中国内唯一のDRAMメーカーであるエルピーダメモリ(以下、エルピーダ)が製造設備の一部を海外に移転させ、コストの高い円から逃げようとしているという記事です。エルピーダは9月15日に発表したプレスリリース『円高とDRAM不況の緊急対策について』で為替の現状について「過去最悪の円高水準」と評しています。

一方、DRAM不況とは一体どういうことなのでしょうか?一般にDRAMは価格変動が激しい市場として知られています。先ほどのプレスリリースでも「DRAM製品の価格は一年前に比べて約3分の1に急落」と書かれています。

さて、そんなエルピーダの業績推移ってどうなっているのでしょうか?
また、それに伴ない財務状態はどう変化してきたのでしょうか?

以下、エルピーダ
の財務をもとに分析していきます。

◆ 損益計算書の視点

まずは全社の業績の推移を見ていくことにしましょう。
エルピーダのPL(2005-2011)
確かに変動幅は大きいですが、これだけでは「昨年の3分の1」の価格というほどのインパクトを読み取ることはできません。売上=単価×数量ですから、価格の低減により販売量は増えたのかもしれません。ともかく、四半期ごとの業績推移を見てみることにしましょう。

◆ 四半期業績の推移
エルピーダの四半期PL(05Q3-12Q1)
DRAMのダイナミックな姿があらわになってきました。同じような商材を扱っているのに売上が倍になったり半分になったり・・・。マーケットの影響を極めて強く受けていることがうかがえます。
2009年は年間通じて赤字水準で推移してしまっています。その後、業績が急回復したものの足元ではまた急降下しています。まるで躁鬱病かのような業績推移です。

◆ キャッシュフローの視点
エルピーダのCF(2005-2011)
一定額以上の"投資"が続いているようで投資CFはマイナスで推移しています。一方、稼ぎは安定していないようで、2009年には営業CFがマイナスになってしまっています。皮肉なのはここ数年で一番大きな投資をした2008年の翌年に業績が急激に悪化してしまったことです。それだけ、市況の見込みが立ちづらい、ということなのでしょう。

投資CFがマイナス、営業CFは不安定ということで、両者の合計であるフリーキャッシュフローはマイナスで推移し続けています。つまり、会社からカネが流出し続けているということです。エルピーダはこの流出し続けるカネを補填するため、外部からカネを調達し続けています。これが、オレンジ色で示されている財務CFです。さて、これらの資金はいつ回収されるのでしょうか?
業績が不安定、そして外部からお金を注入してきたエルピーダ、そのBSはどう変化しているのでしょうか?ぜひ、その姿をイメージしてみてください。

◆ バランスシートの視点
エルピーダのBS(2005-2011)
BSの左側、カネを何に投資しているか?はあまり変化がありません。すなわち、緑色の固定資産、DRAMの生産設備です。キャッシュフローの項目で見たように投資をした2009年にその額が一段と大きくなっています。

これに対して、BSの右側、どこからカネを調達しているか?はかなり大きく変動しています。その背景にはPLで見た、利益の変動性の高さがあります。つまり、自己資本が簡単に毀損してしまうため、新たな資金調達が常に必要とされるのです。新たな資金調達を株式発行でまかなうか、それとも借金を使うかでその時々の資本構成が変わるのです。
2009年を例に上げれば、業績悪化で自己資本が大きく毀損し(PLの視点)、手元のキャッシュが減ってしまったため(CFの視点)、借金で資金調達を行っています。黒色の枠で囲われた借金の面積が大きく変動しているのがわかるでしょう。
このように、BSは面積の大きなところ、そして変化の大きいところに注目していくのです。

◆ 「素朴な疑問」への回答は?


業績の推移を見る限り、現状は極めて厳しい、というか不透明感が強すぎます。当初予測より、純利益が90億円も下振れしてしまったという過去もあります(2006年3月期の当初予測売上2600億円、営業利益153億、純利益140億に対し、結果は売上2415億、営業利益1億、純利益▲47億)。それ以降、エルピーダは業績の予想を行っていません。その代わり、業績予測の前提となる判断材料を開示しています。誠実な姿だと思います。
エルピーダの有価証券報告書「事業等のリスク」を見て思わずため息をついてしまいました。そこにはこれでもか、とばかりにリスク要因が記載されています。付加価値をつけることが困難な商材であるため、価格競争に陥りやすい。それに需給の変動も激しい。そんな難しい商材を作るのに、多額の設備投資が必要となる。設備が過大になるため、撤退しようにも撤退できない。結果、価格競争が激化する・・・。
土壌としての事業環境が極めて厳しいのがDRAMといえるでしょう。モノづくりの行く末がこのような状況になってしまうのは悲しすぎます。

エルピーダは業績の厳しかった国内メーカーが合弁して誕生した企業です。エルピーダの姿が、現状多く存在する「総合」家電の行く末を示唆しているのでは・・・と陰鬱な気持ちになります。「モノづくり」が何をもたらすのか?重い課題です。


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