2011-09-30

業績にブレーキ?アクセル?日清紡HD、M&Aの行方!

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◆ 海外M&A、隆盛期に 3兆円に倍増(2011/9/30)
日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)が4~9月、前年同期比2.2倍の約3兆円に膨らんだ。グローバル企業だけでなく内需型や中堅企業まで買い手が多様化しており「M&Aブーム」の様相となりつつある。日本は欧州不安の余波が軽微で買収資金の調達環境はなお良好。円高も買収には追い風となり、収益環境が不透明感を増す中でも企業は新興国などへの成長投資に打って出る構えを崩していない。
◆ 記事への素朴な疑問

国「内」企業が国「外」企業を買うIn-Out型のM&Aが増えていまっせ、というニュースです。今回のエントリーで取り上げるのは日清紡HD。9月26日に世界2位のブレーキ用摩擦材メーカーを440万ユーロで買収することを発表した日清紡HD、今回の買収で世界首位に立つといいます。この日清紡HD、HDの名の通り多くの事業部門を抱えています。

さて、日清紡HDにとってブレーキ事業とはどんな位置づけなのでしょうか
そして、ぶっちゃけ今回の買収はいけてるのでしょうか?

以下、日清紡
の財務をもとに分析していきます。まずは業績の推移を見ていくことにしましょう。

◆ 損益計算書の視点
日清紡HDのPL(1998-2011)
売上をざっと見ると2000年代中盤までの停滞、そして急成長と急降下、直近の2011年に急回復といった推移がみてとれます。2,400億円から3,200億円へとなった2011年の急回復が気になりますが、通常これだけの急回復は売上をどこか他から持ってこないと達成できないものです。日清紡の場合もご多分に漏れずM&Aにより売上をかさ上げしたものです。

さて、これらの売上がどのような事業により構成されているのか?セグメントの状況をみていくことにしましょう。

◆ 日清紡って何で儲けている会社なの? セグメントの視点

まずはセグメントごとの売上高をみていくことにしましょう。すると、日清紡は8つの事業部門をもっているのがわかります。売上3200億で8事業部門というのは正直多角化し過ぎなんじゃないか?という気がしないでもありません。
日清紡HDのセグメント別売上(2011)
エレクトロニクス事業が全社の3分の1以上の主力事業といえそうです。そして、今回のM&Aの舞台となるブレーキ事業は全体の3番目の大きさ、売上でいくと約460億といった水準です。さて、利益の面ではどうなっているのでしょうか?
日清紡HDのセグメント別利益(2011)
利益の面でいくと、不動産セグメントがダントツの収益性をあげています。これは、歴史のある企業にありがちなパターンなのですが、祖業(「紡」の文字からもわかるように繊維です)は競争の波に晒され低収益に、そして古くから所有している土地はその有限性から高収益を保つという構造です(赤坂にあるテレビ局などはその典型でしょう)。

日清紡の場合、赤坂のテレビ局ほど酷くはなくエレクトロニクス、ブレーキという事業を育ててきているといえるでしょう。今回のM&Aでブレーキ事業を拡大させようとするのは、花形事業であるブレーキ事業を強化しようということだといえそうです。その資金源になっているのが不動産というのがなんともアレな感じではありますが。

◆ 「TMD」ってどんな会社?


さて、今回の買収ターゲットとなった「TMD」ってどんな会社なのでしょうか?「日清紡、欧州のブレーキ用摩擦材メーカー買収」では以下のように紹介しています。

ルクセンブルクのブレーキ摩擦材専業メーカー。1881年に設立したスモール&パークスが前身で、2000年代に入り、相次いで競合を買収して規模を拡大した。リーマン・ショックを受け、08年に一度経営破綻し、再生ファンドに買収された後に再建を進めてきた。英国やドイツなど欧州のほか、中国、メキシコ、ブラジルなど全世界に16の生産拠点を持つ。

日清紡の事業エリアの重複が少ないというのは好ましいポイントといえそうです。一度経営破綻云々という記述は気になるところ、再生ファンドは、再生に要した資金を回収する必要がありますからExitのタイミングを探っていたはずです・・・。そこに現れたのが日清紡ということなのでしょう。

さて、冒頭で紹介したとおり、TMDの買収価額は440百万ユーロです。この買収価額、TMDの業績と比べてどんなものなのでしょうか?

TMD直近の3期の純利益の推移は▲369百万ユーロ、▲68百万ユーロ、直近の2010年12月期に黒字転換を果たし11百万ユーロという水準です。日清紡は新規に100%の株式を取得することになるため、ようやく11百万ユーロの利益を出せるようになった会社を、440百万ユーロで買収することになります。PERでいうとちょうど40倍という水準です。同じく直近の純資産は168百万ユーロ、PBRでいうと2.6倍といった水準になります。TMDのBSがどうなっているかは不明なのですが、正直お高い買い物に見えてしまいます。


◆ 「2年から3年の間に返済できるだろう」


日清紡の鵜沢社長は、買収資金のの回収見込みについてこのように述べています。当初このコメントを読む前は不動産事業の存在を知らなかったため、なんとも力強い発言だ、と思っていました。それはともかく、キャッシュ余剰の生まれる事業から、次なる成長の種となる事業にマネーを投じるというのは正しい姿といえるでしょう。ただ、キャッシュフローの推移を見るかぎり2~3年で返済というのは楽観視しすぎるのではないでしょうか?悪くはないけど、そこはかと微妙な要素が・・・というのが今回の買収のように思います。

日清紡の業績にアクセルをかけることになるのか?それともブレーキとなってしまうのか?ファンドからの買収案件の行方に注目です。
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