不動産マーケティング会社のアトラクターズ・ラボが提供しているデータが静かな話題を呼んでいる。それは、「想定成約中古価格」。過去の売り出し事例をもとに中古マンションの実際の成約価格を算出し、時点補正を加えることで、現在の取引価格を推計したものだ。実際の取引価格の履歴が見られるようになるというのはすごい。記事は続きます。
「想定成約中古価格」とは非常にわかりにくい言葉だが、これが意味しているのは、「物件を売り出して3カ月以内に成約する価格」のこと。要は時価。株式市場で言うフェアバリューと考えればいいだろう。ちょっと待てと、この想定制約中古価格なるものが時価に近いものというのはOKです。しかし、それをもってフェアバリューというのはNGです。
◆ 「価値」と「価格」
今回、公開された中古マンションのデータはあくまで「価格」にすぎません。この単なる価格の履歴だけで"中古マンションで絶対に損な買い物をしない方法が確立されてしまった
あくまで、他の中古マンションと比べて価格が高いか安いか?であって
そもそも、そのマンションはお得な物件かどうか?はわからないから
◆ 利回りなんぼ?
そもそもある資産がお買い得かどうかはどうやって判断すればよいでしょうか?それは、①資産がどれだけのリターン( = 利回り)を生み出すか、そして②どのような値段がついているか?の2つ問いにかかっています。前者を価値、後者を価格と呼びます。そして、価値に対して妥当な価格が付いていれば、それをフェアバリューだ、というのです。
まずは利回りを見ていくことにしましょう。例えば、郵貯の現在の利回りは 0.035%です。これは100万円を1年預けておくと350円の利益が出ますよ、ということです。さて、今回の記事で公開されたのはマンションの価格ですから、リターンにあたるマンションの賃料がわかれば、マンションの利回りを計算することができます。
ということで、今回ご紹介いたしますのは、都区部の騰落率上位にランキングされております、ザ・ハウス南麻布。この物件を使って利回りを計算してみたいと思います。
間取り1LDK(81.21㎡)のこちらの物件、賃料は月 60万円となっております。・・・さて、こちらの想定成約単価は188万円/㎡となってますので、分譲価格は 188万円/㎡ × 81.21㎡ = 1億5,266万円ということになります。
そして、この物件から得られる年間賃料は60万円 × 12 = 720万円。これを分譲価格の1億5,266万円で割ると利回り 4.7% が求められます。これは、PERでいうと21.2(つまり回収するのに21年以上かかるということです!)
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| 利回り = リターン ÷ 資産 |
ちなみに、この数字にはマンションを運用する諸経費が含まれていません。管理費に修繕引当金に税金に・・・。また、不動産を運用するのにはリスクがあります。空室になってしまうリスク(誰も借りなければもちろん賃料は入ってこない!このリスクを回避するために礼金があるわけですが・・・)、売りたくてもすぐにはお金に変えられないかもしれないリスク(これを流動性リスクといいます)、物件の老朽化リスク(メンテナンスに追加的にお金が必要になるかもしれません)などなど
これらのリスクを考えた際に、あなたは 4.7% という利回りをどう評価するでしょうか?
◆ えっ、このマンションの利回り低すぎ・・・
割高なんじゃない?というのが個人的な印象です。
利回りが低い・割高ということは「賃料が安すぎる」かそれとも、「分譲価格が高すぎる」ということになります(分譲価格がそのままで賃料が上がれば、また、賃料がそのままで分譲価格が下がれば利回りは上昇することになります)。
みずほ信託銀行が出している「不動産マーケットレポート」によれば賃貸・ワンルームマンションに対する不動産投資の期待利回りは 6.0%くらいが相場のようです。
この数字を前提とすると、このマンションのフェアバリューは 720万 ÷ 6% = 1億2,000万円ということになります。つまり、先ほどの1億5,266万円という想定成約価格は、フェアバリューに対して27.2%ほど割高である、ということです。
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| フェアバリュー = リターン ÷ 期待利回り |
確かに今回の数字の公開は、私達消費者と不動産業者の情報格差を解消する可能性もあります。ただ、この想定成約中古価格の妥当性については、冷静な判断が必要かもしれません。はてブのコメント欄にもそのことを指摘している人たちがいます。
しかし、より重要なのは、投資家的な視点で見るということです。資産が生み出す「価値」はどれだけなのか?資産に付けられている「価格」はどうなっているのか?この2つの問いを持つことであなたの見える風景は変わってくるはずです。


