2011-10-18

不正会計?オリンパスの無謀M&Aで消えた株主価値を検証してみた

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オリンパスが揺れに揺れています。
「トップダウンの経営方針」が日本的経営に合わなかったことを理由に外国人社長を解任。解任されたマイケル・ウッドフォード氏がその解任の真相について、在外メディアで発言しています。
14日突然解任されたオリンパスのマイケル・ウッドフォード前社長兼最高経営責任者(CEO)は15日、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタ ビューで、解任直前に、書簡で「重大な企業統治上の懸念」を理由に、菊川剛会長と森久志副社長に対し辞任を求めていたことを明らかにした。(ウォールストリートジャーナル日本版2011年10月17日  
「重大な企業統治上の懸念」とは何か?端的に言うと、「ありえないM&A」です。

オリンパスは2008年に英ジャイラスをはじめ、巨額のM&Aを行なっています。ウッドフォード氏はこのM&Aに不審を抱き、第三者機関であるPwCに調査を依頼、報告書の提出を受けました。その内容は・・・ウォールストリート・ジャーナル紙の続きを追ってみましょう。
報告書の大半は、ジャイラス買収の際にアドバイザー会社であるケイマン諸島に登記のあるアグザム・インベストメント(Axam Investment)と、ニューヨークに登記のあるアグゼス・アメリカ(Axes America)に支払われた報酬に関するものだった。ウッドフォード氏は両社にコンタクトを取れなかったと言い、本紙も両社の連絡先を確認できなかった。   報告書は「買収の規模及び性質から鑑みて、通常買収総額の1%程度が報酬として適切だと考える」と述べた上で、オリンパスがアグザム及びアグゼスに対し、6億8700万ドルの報酬を払ったことを指摘した。これは買収価格の36.1%に相当する。
不透明な所が多いですが、財務の視点でオリンパスの動きを追ってみようと思います。

◆ バランスシートの視点

オリンパスのバランスシート[2007-2011]
M&Aが行われた2008年に「のれん」・「借金」が大きく増えている。 

事件が起こったのは2008年、買収プレミアムに相当する「のれん」(太線囲いの部分)が787億円から2,998億円へと、2,200億円ほど増えています。つまり、それだけ高値掴みをしてしまったということです。普通、高値掴みをするのはお金に余裕がある場合がほとんど(それだけ財布の紐がゆるんでいるということ)。

さて、オリンパスは?

・・・というとそれとは全く逆。見事に借金漬けになっています。それは、BSの右側調達サイドを見るとわかります。買収前の2007年、借金(短期借入金+長期借入金、点線囲いの部分))の総額は4,600億円超、株主資本の1.4倍にものぼっています。到底、高値掴みなんかしている場合ではありません。にも関わらず、オリンパスは英ジャイラス社及び国内の非上場企業に対して買収プレミアムを支払っています。借金の額は買収後に、6,500億円強へと増えています。買収の資金を借金でまかなったことを意味しています。

この高値掴みの買収のツケを払うときはすぐ来ます。それは2009年、黄色の株主資本が大きく目減りしています。株主資本は毀損されてしまったのです。

◆ オリンパス、高値掴みの歩み

2007年11月に発表された、「ジャイラス社の買収手続き開始の合意について」というプレスリリースでオリンパスは買収金額について次のように説明しています。
ジャイラス社とは、同社普通株式1株あたり630ペンスで合意しました。買収総額は約9.35億ポンド(約2,117億円)を予定しています。当社は、デューデリジェンス等を通じて、ジャイラス社の資産内容、事業内容他、潜在的シナジー等について総合的に検討を重ね、今回の買付価格が公正かつ妥当なものであると判断しました。
普通、ここにフィナンシャルアドバイザーの名前が出てくるものです。しかし、このプレスリリースにはその記述がありません。

さて、買収総額2,117億円と買収時のジャイラス社純資産との差額がのれんとして計上されることになります。買収時の純資産は公表されていなので、2006年決算の純資産で代用すると、その簿価は約647億円(286百万ポンド)。買収価額との差額は約1,470億円となります。これはPBRでいうと3倍超、PERでいうと70倍を超える超割高な買い物ということになります(いずれも2006年の決算数値ベース)。

これで、のれんが2,200億円増えた理由の大半が説明できました。ただ、のれんは他にも740億円ほど増えています。これは、先程あげた国内非上場企業のM&Aに関連するものと思われます。ウッドフォード氏が問題視したのはジャイラス社のM&Aに関するものですが、後者の国内M&Aもその妥当性が問われるところでしょう。

◆ 謎のファイナンシャルプアドバイザー

さて、先ほどの公開資料に登場「しなかった」フィナンシャルアドバイザー。一般に、フィナンシャルアドバイザーは、M&Aなどの際に買収先の企業の値段の妥当性をチェックします。しかし、今回の事例では、このフィナンシャルアドバイザーに対して、買収対象であるジャイラスの優先株を配るというナゾのスキームになってるというのです。

これではフィナンシャルアドバイザーが果たすべき第三者的な役割を全く期待できません。彼らは自作自演的に査定金額を高めにしてしまうことでしょう。だって、高い査定額にすれば、貰える優先株の価値も上がります。結果、WSJによれば彼らは6.87億ドルもの報酬をゲットしています。奪われたのはオリンパス株主価値に他なりませんです。こういった関係を「利益相反」といいます。

なぜこんなスキームが組まれ、アドバイザーに巨額の手数料が流れていったのか?「普通」に考えると、本当に意味が分かりません。

◆ オリンパス?株持ってないし、関係ないねー

本当でしょうか?直接的にはオリンパスの筆頭株主(2011年3月末時点)は日本生命です。そして、間接的には日本株に対するガバナンス懸念が増すことで、日本株の売り要因となるかもしれません。

「当たり前」に考えると、よくわからないことが多過ぎる今回のオリンパスの事例。

PwCによるレポートが早く全て公開されること、そして一連の資金の流れについて説明責任が果たされることを望まずにはいられません。

何しろ、取締役「全員」がウッドフォード氏の解任に賛成したのですから・・・。



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