◆ 墓穴
まずは、10月18日付の日経新聞の記事
英紙などによると、ウッドフォード氏は同社が英ジャイラスを当時のレートで約2,000億円で買収した際に「ファイナンシャルアドバイザーに約700億円という多すぎる金額を払った」と主張している。菊川氏は「実際に払った手数料は約300億円だ」と訂正し、適正額だと語った。
出所:オリンパス菊川社長「買収手数料は適正」と反論 (注:有料記事です)えーっと・・・何でしょう、この絵に描いたような「墓穴掘り」は。買収金額2,117億に対して約300億って十分多すぎるでしょう。この手数料が適正額って、一体あなたは何をおっしゃっているのですか!と激しく突っ込みたくなりところですが、心を落ち着けて
「M&Aのアドバイザーに対する「適性」な報酬額ってどの程度なのか?」と問うてみます。
ここで、第三者機関であるPwCの意見を聞いてみることにしましょう。昨日のエントリーでも扱ったウォールストリート・ジャーナル紙を再び引用します。
「買収の規模及び性質から鑑みて、通常買収総額の1%程度が報酬として適切だと考える」と述べた上で、オリンパスがアグザム及びアグゼスに対し、6億8700万ドルの報酬を払ったことを指摘した。これは買収価格の36.1%に相当する。
出所:(ウォールストリートジャーナル日本版2011年10月17日 )
1%程度が相場だというのが第三者機関であるPwCの意見。
これに対し、菊川会長の発言によると、その比率は14%超・・・。
通常の14倍!やはり高い、高すぎる!と言わざるを得ません
これに対し、菊川会長の発言によると、その比率は14%超・・・。
通常の14倍!やはり高い、高すぎる!と言わざるを得ません
それにしても、約300億円という数字と、ウッドフォード氏が指摘した約700億円(6億8700万ドル)との間には400億円ほどの開きがあります。
この数字は何なのでしょうか?
◆ 6億8700万ドル支払った、ただし・・・
10月19日これに対し、オリンパス自身が「一連の報道に対する当社の見解について」というプレスリリースを発表しました。オリンパスも重い腰を上げたということでしょうか?当該リリースの中「2.M&A案件に関する一部報道に対する当社の見解」で、フィナンシャルアドバイザーとの契約の一部が明かされています。また、先ほどの400億円の開きの答えがあります。
このリリースによると、2007年6月21日の段階で、支払金額は以下のように定義されています。
支払金額:基本報酬 500万ドル + 成功報酬 買収金額の 5%
成功報酬5%の妥当性はともかくとして、この算定メカニズムによれば、支払金額は 500万ドル + 買収金額 2,117億円 × 5% の合計ということになります。当時のレートをざっくり1ドル=100円とすれば、110億円ということになります。
さて、実際の支払金額はどうなっているのでしょうか?以下がオリンパス側の見解です。
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| アドバイザーに対する支払金額及びその内訳(出所:オリンパスIR資料) |
支払金額の合計は6億8,700万ドル(!)。そのうち、アドバイザー業務に対する報酬は2億4,398百万ドルだそうです。これは菊川会長の「手数料は300億円」と近い数字です。この段階で当初見込みの110億円を上回り、買収金額の5%を超えてしまっています。そして、残りの、4億4,300万ドルの支払い理由は「優先株の値上がり分」となっています。
つまり、アドバイザーに対して総額6億8,700万ドル払ったことは認めつつも、その大半を占める4億4,300万ドルについてはM&Aの手数料として払ったのではなく、あくまで優先株の対価として払ったのだ、としているのです。この優先株部分に関する認識の相違がウッドフォード氏と現経営陣が提示した数字の違いです。
◆ 優先株の謎
2008年9月に1億7,698百万ドルで発行した優先株をわずか1年半後の2010年3月に6億2,000万ドルで買い取る・・・。
アドバイザー側としてはウハウハです。しかし、オリンパス側からすると、優先株を発行してしまったあまり、当初の想定を超え、ズルズルとカネを引っ張り出されてしまった形になります。
前回のエントリーでもご紹介したとおり、オリンパスは決して財務的に余裕のある会社ではありません。そのオリンパスにとって、6億2,000万ドルの負担は決して小さいものではありません。この出費との直接の因果関係はわかりませんが、同じ2010年3月期には事業の一部を売却し、740億円あまりのカネを得ています。
ともかく今回のプレスリリースで、オリンパスが「アドバイザーに支払った金額が総額6億8700万ドル」ということはウッドフォード氏、現経営陣ともに一致したことになります。
今後のポイントは、・・・
- なぜオリンパスは、フィナンシャルアドバイザーとの間にズルズルお金を引っ張られるような契約をしてしまったのか?
具体的に言うと、ワラント・オプション・優先株の内容はどうなっていたのか?ということになります。当時の経営陣が何らかのミスをしてしまったのか?それとも意図的な何かが働いたのか・・・
菊川会長、待ったなしですよ

